老犬
Posted By 18678 on 5月 21, 2013
毎日事務所に通う途中に、1軒だけ取り残されたように古い家があって、そこに、ずいぶん昔から老犬がいる。
ぼくがこの事務所に通うようになってからもう11年になるけれど、おそらく最初の1年目の最初のころからがんばっている犬だ。
記憶では、その当時からそれほど幼い犬であったという印象はなかったから、きっとかなりの年数の間、その家に棲んでいるのだ。
けっこう車の通りが激しい幹線道路沿いの家なのに、その犬は長い間放し飼いにされているようで、ときおり車の途切れた瞬間を見計らって大通りを渡ってくる姿を目にすることがある。
放し飼いにされているだけあって、飼い犬特有のあきらめたような切ない表情は見せなかったけれど、おそらく老犬だろうから、それはそれでちょっと心配だ。
それでもたいていの場合、その老犬は家の門の前に座っている。
ずいぶん長い間そうしている。
老犬とは言っても、「かわいい」というに十分な、優しい表情の犬だ。
おそらく雑種なのだろう。
毛がフサフサした中型犬である。
ものすごく暑い夏も、そしてもちろんものすごく寒い冬も、いつも古い家の門の前に座って車の往来をじっと見ている。
かなり古い家にいる老犬。
ちょっと見た感じ、飼い主と思しき人も、かなりの老人である。
きっと時間とともに、人も、犬も、そしてその古い家もなくなってしまうのだろう。
老人と老犬と、そして古い家・・・
なんだか、物語の中に飛び込んでしまったようなそんな時代錯誤な空間が、ぼくはたまらなく好きだ。
